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静岡地方裁判所 昭和59年(わ)116号 判決 1984年7月26日

本籍

静岡県浜松市鍜治町九五番地

住所

同市白鳥町二五八番地

会社役員

藤野榮一

昭和七年九月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官杉本一重出席のうえ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二五〇〇万円に処する

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罰となるべき事実)

被告人は、静岡県浜松市舘山寺町二八五七番地において「ホテルキング」、同市白鳥町二五八番地において「ホテルニュージャパン」、同市常光町五八八番地の五において「ホテルニュージャパンⅡ」(但し、開業の昭和五六年五月)の各屋号のカーホテルを経営していた者であるが、所得税を免れようと企て、右各ホテルの売上を公表帳簿から一部除外し、そのことによって得た資金で無記名定期預金を取得するなどの方法により所得の一部を秘匿したうえ、

第一  昭和五五年の実際の所得金額が七〇一〇万二一二六円であり、これに対する所得税額が三七六五万三〇〇円であるのにかかわらず、昭和五六年三月一四日、同市元目町三七番地の一所在の浜松税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四六五万一五一四円であってこれに対する所得税額が三二万四六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税三七三二万五七〇〇円を免れ

第二  昭和五六年の実際の所得金額が八八四四万一七八二円であり、これに対する所得税額が五〇九二万三〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和五七年三月一三日、前記浜松税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一四九五万三〇一二円の損失であってこれに対する所得税額が零である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税五〇九二万三〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  被告人作成の上申書六通

一  藤野欣子、石塚欣子、鈴木祥司及び半場信吾の検察官に対する各供述調書

一  藤野欣子(四通)、石塚欣子、鈴木祥司(二通)、船越静江(二通)、影山幸雄、半場信吾、守田浩一、袴田光枝、袴田勝彦及び岩野真勝の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  検察事務官作成の報告書

一  大蔵事務官作成の告発書、査察官調査書(昭和五八年七月四日付、同月七日付、同月八日付、同月九日付(二通)、同月一一日付(検察官請求甲号八番、二七番、二八番及び二九番のもの)、同月一二日付(二通)、同月一三日付(二通)、同月一四日付(三通)、同月一五日付、同月一八日付(同一八番、二〇番及び三一番のもの)及び同月二五日付)及び証明書(同一七番のもの)

一  押収してある手帳四冊(昭和五九年押第一〇三号符号一ないし四)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検察官請求甲号二番のもの)、証明書(同四番及び五八番のもの)及び査察官調査書(同一九番のもの)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検察官請求甲号三番のもの)、証明書(同五番及び五九番のもの)及び査察官調査書(昭和五八年七月一一日付(同一三番のもの)及び同月一八日付(同二一番のもの))

(法令の適用)

罰条 判示第一の事実につき

昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条(行為時)、右改正後の所得税法二三八条(裁判時)、刑法六条、一〇条(右行為時法の刑による)

なお、最高裁昭和五九年三月二七日第三小法廷判決判例時報一一一七号一〇頁参照)

判示第二の事実につき

右改正後の所得税法二三八条

刑種の選択 懲役刑及び罰金刑選択

併合罪の処理 刑法四五条前段、懲役刑につき、四七条本文、一〇条(重い判示第二の罪の刑に加算)、罰金刑につき同法四八条二項

労役場留置 刑法一八条

執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

(裁判官 植村立郎)

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